人間ドックで早期のがんを発見することは、健康で楽しい人生を続ける上で非常に重要なことです。
昔は、がんというと非常に恐れられていましたが、今では医療技術のめざましい進歩により、多くのがんが根治できるようになってきています。ただし、そのためには早期発見が重要なことは言うまでもありません。
少しでも早く、早期がんを発見するために、世界中の頭の良い研究者たちは日夜研究を重ねてきています。
その成果のひとつがスクリーニング検査と呼ばれる、画像装置を用いて全身をスキャンし病巣を見つけ出すもの。
従来は部位ごとに検査して、病気の有無を判断していましたが、この方法は手間も時間もかかるため、受診者にとっては大きな負担です。
スクリーニング検査は、CTやMRIといった画像診断装置を使って、全身を一気にスキャンします。
これにより1回の検査で全身の状態が分かるため、手間も時間も少なくて済みます。
こうしたスクリーニング検査が、今ではがんの早期発見に一役も二役も買っているわけですね。
この記事の目次
PET/CT(PET検査)
PET検査は、いまやがんのスクリーニング検査の定番といっても良いでしょう。
従来のX線を用いた検査では、がん細胞がある程度大きさ(最小で1.5cm)以上にならないと検出が困難でした。
これに対し、PET検査では、0.5~1cm程度のごく小さながん細胞でも検出が可能です。
PET検査の原理
多くのがん細胞は、急激に成長する際に通常の細胞の3倍以上のブドウ糖を消費します。
PET検査はこの原理を利用します。体内にブドウ糖に似た成分の検査薬を注射すると、この検査薬はがん細胞に集まっていきます。これをPET装置で撮影すると、がん細胞の部位が分かるんですね。
同時にCTスキャンでの撮影も行っているため、どの臓器のどの部位に眼病層があるのかが分かります。
PET検査のメリット
メリットはなんと言っても短時間で全身検査が出来ることです。
これは従来のように部位ごとに検査室を渡り歩く検査と比べても、圧倒的に受診者の負担が小さくて済みます。
PET検査のデメリット
ではデメリットはあるのでしょうか?
PET検査は全身を1回でスクリーニングできますが、どこにがん細胞があるのか、その存在を突き止めるのが主な目的の検査です。このため、場所の特定は出来ても形や大きさなどの細かいことまで明確には分かりません。
このため、必要に応じて追加の検査でより詳細を突き止めていく必要があります。
また、すべてのがんに対して有効というわけではない点があります。
がん細胞に、ブドウ糖が集まる性質を利用しているため、がん細胞でなくてもブドウ糖の消費率が高い臓器や、尿路系の臓器、消化器系の臓器などは、がんが無くても反応してしまうことがあります。
MRI全身がん検査(DWIBS)
PET検査は早期のがんを発見するという点では、現在最も進んだ検査法のひとつですが、若干ではありますが被爆するというデメリットがあります。
PET検査並みの画像が得られて、被爆もないような装置はないものか・・・それがMRI先進がん検査です。
MRI全身がん検査の原理
がん細胞は急速に増殖していくため、正常な細胞と比べると細胞内の水分子が動きづらいという特徴があります。
この状態をMRI装置で捉えることで、がんを発見していこうというのがMRI全身がん検査です。
MRI全身がん検査のメリット
メリットはなんと言っても被爆がないこと。
それにPET検査に比べ費用が安いことでしょう。加えて検査前の食事制限も無いし、事前に注射を打つこともないので、受診者の負担はPET検査よりも少ないと言えます。
MRI全身がん検査のデメリット
デメリットももちろんあります。
一部の臓器、特に肺や心臓などの病変の検出が苦手です。
また、MRIは磁気を用いるため、人工ペースメーカーを用いている人はNGです。
MRI全身がん検査は比較的新しい検査法のため、まだあまり普及していないというのもデメリットと言えるでしょう。
MR-PETとは?
ここまでで、PET検査、MRI全身がん検査についてどの原理やメリット・デメリットを説明してきました。
どちらにも得意な部分と苦手な部分がありましたよね。
お互いの苦手な部分を補完し合うような装置があれば・・・なんて思っちゃいます(笑)
実は、これから紹介するMR-PET検査は、まさにPET検査とMRI全身がん検査の苦手部分を補完し合った検査法なんです。
MR-PET検査は、PET検査とMRI検査を同時にひとつの装置で行うことで、早期がんの場所、形、大きさなどが1度の検査で分かってしまいます。
MR-PETは、2010年にドイツの医療機器メーカーであるシーメンス社から発売され、日本でも少しずつ導入が始まっています(2017年現在、国内で10台程度が導入)
そういう意味では、まだまだ普及には時間がかかると思われますが、徐々に導入する施設も増えていくことでしょう。
受けられる施設が少ないということと、検査費用が高い(2017年現在、1回の検査費用が約13万円)というのが、受ける側から見たデメリットと言えます。
まとめ
医療技術の進歩に合わせ、診断装置の進歩もめざましいものがあります。
一昔前までは、名前を聞くだけで恐れられていたがんも、早期発見できれば決して怖い病気ではなくなりつつあります。
早期発見のための診断装置も、日々進化している現在、こうした装置を利用しない手は無いと思いませんか?
【参考記事】
人間ドックの検査の種類について、いろいろ知りたい!